介護業界について

本当に良い介護士はどっち?

特に施設介護で介護職として働いていると、「スピード、効率重視の介護士」と「スピードは遅いけど一人ひとりに対して丁寧な介護士」が居る。

どっちが良くて、どちらが悪いと言いにくいのが現場の実感である。もちろん入居者個人だけを考えれば、一人ひとりに対して丁寧な介護士の方が良いに決まっている。しかしながら介護職は複数名が同じシフトでチームになって現場を回すので、丁寧な介護士の仕事を、他の介護士が被ってくれる事で1日の現場が成り立つ面も往々にしてありえるのだ。

これはスポーツに置き換えるとわかりやすいが、サッカーでロナウジーニョという選手が居た。彼は一時期世界でもトップ選手と言われていたが、サーカスのような自由気ままなプレーが売りで、ファンも彼を目当てにスタジアムに大勢の人が詰めかけた。私もその一人だ。

ただ、試合を実際に見た事がある人ならよりイメージがつくと思うが、彼のプレーは周りの選手の犠牲があって成り立っている。まず基本的に守備をしない。ミスをした時にはチームメイトが、そのミスを補うために走り回って守備をする。そしてもっと効率よく得点出来るシーンでも彼は魅せるプレーをするので、それに周りが合わせる必要がある。もちろん、そうする事で試合にも勝てるから喜んでそうする訳だが、彼の所属するチームはいつの時も、主役と脇役のはっきりしたサッカーで、脇役に徹するメンバー達(その人達もトップクラスの実力者)はどんな気持ちなんだろうと思う事もあった。

また、彼は日々の練習も真面目に行わなかった。パーティ三昧の日々で遅刻の常習犯だった。でも試合になれば誰よりも活躍し、主役は彼のもので、サポーターから一番愛されるのはいつでもロナウジーニョである。※別にロナウジーニョに個人的な恨みはありません(笑)

介護に話を戻すと、介護はサッカーのように勝ち負けがない。そしてサッカー選手のようにサポーターが居る訳ではないので、脇役に徹しても誰からも正当には評価されない。そして、一人ひとりに丁寧に接する介護士は、当然入居者からは好かれる。効率重視の介護士の中には、回らない現場を必死に回すために、余裕なく必死に働く事で入居者から、いつもせかせかしていると嫌われる人も居る。

私も施設長をやってきた中でも、良い介護士の定義について、確固たる正解を持っている訳ではない。施設の状況、その日の状況でも当然異なるだろう。

ただ、効率重視の介護士がイコールよくない介護士とみる風潮には疑問を持っていた。入居者に愛情があるかないかは一緒に働いていたらわかる。そこは介護の仕事への向き合い方、スタンスの差だと考えるのが正しいだろう。そして、いつも同じシフトに入って仕事したいと人気があるのは、実は効率よく現場を切り盛りしてくれるタイプの方だったりする。

周りのスタッフを見る時に少し視点を変えると、みんなが言う「いいスタッフ」「よくないスタッフ」の違う側面が見えてくるかもしれないと思います。この記事をそういった事を、少し考えるきっかけにしてもらえたら嬉しいです。