介護業界で働く人間からすれば、そんな当然の事と思われるだろうがはたしてそうだろうか?
よく病院の看護師さんが、初めて施設の看護師に転職した際に言われるのは、「なぜAさんは病院に連れていかないんですか?」「Bさんは検査数値が悪いので入院してもらいましょう」「Cさんは糖尿病なのであれは食べたらダメだ、これもダメだ」と言う事だ。病院出身の看護師さんから見たら、施設は治療すべき病人ばかりに見えるらしい。
でも、施設はあくまで治療の場ではなく、生活の場。数値が悪くたって、手術すればよくなるものだって、本人が望めば治療はしない。個人の尊厳を何より尊重すべき場所なのだ。
そこを理解していない施設は、すぐに病院になってしまう。胃ろうの造設なんて最たる例だろう。口から食べられなくなったから、胃に直接栄養(食事)を外から入れようなんて日本にしかない治療法である。
私は、過去にアメリカの介護施設の施設長にインタビューしたことがあるが、胃ろうについては、「そんなものがあるのか!?」と驚かれた。アメリカでは食事が食べられない=本人の寿命と考え、延命治療である胃ろうなんてものは選択肢にもあがらないらしい。
日本はというと、最近は胃ろう造設を拒否する人、進めない医師も増えてきているというが、それでも胃ろうの人は普通に見かけるし、相談も受ける。個人の意思でそうされているのなら良いが、ほとんどは本人不在の中、家族と医師で決められている事が多いように思う。
あなたが働く施設はどうでしょうか?病院になってはいないでしょうか?
施設は閉じられた世界になりがちなので、一旦立ち止まり、私が働く施設が本当に入居者の尊厳を尊重する「生活の場所」になっているかどうか考えるきっかけになればと思います。